1917年 ロシア革命 世界史教師がわかりやすく解説【総集編】

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てっちり

元 高校世界史教師

教室での授業では、限られた人数に対してしか歴史を伝えられないことに物足りなさを覚える。
そしてもっと多くの人に歴史の面白さを伝えるために
教師を辞めてネットで世界史関連のコンテンツを配信するようになった。

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こんな人におすすめ

ロシア革命について学んでいますが、

登場する勢力が多すぎたり、

覚えるできごとが多すぎたりして、

すごく混乱しています。

スッキリわかりやすく教えてくれると助かります。

とお悩みの方

 

この記事では、

以下の4ステップでロシア革命をわかりやすく解説していきます。

 

ロシア革命を理解するために

STEP1 ロシア革命によって何が変わったのか?を理解しよう

STEP2 ロシア革命の背景を理解しよう

STEP3 登場勢力とそれぞれの思惑を理解しよう

STEP4 革命の流れと出来事の意義を理解しよう

 

読者のみなさんへのメッセージ

私は世界史教師をしていました。

 

中でも教えるのが苦手だったのが、

ロシア革命でした。

 

ロシア革命では登場する勢力も多いし、

いろんな勢力の意図が絡み合って起こっているので、

自分で学ぶ際も、

授業で教える際にも苦労した単元です。

だから「わかりにくいな…しんどいな…」と思ってしまうのは、

当たり前だと思います。

 

でもそんな単元だからこそ、

スッキリ理解できたときの達成感は尋常じゃないです!

何度も反復して学習していくうちに、

その境地までたどりつくことができるため、

一緒にがんばっていきましょう!

 

STEP1 ロシア革命によって何が変わったのか?

ロシア革命の成果は大きく2つあります

 

①ロシアの帝政が打倒された

②ロシアが工業労働者を中心とする社会主義国家となった

 

ロシア革命中には様々なできごとが起こり、

これら①②の変化が段階的に起こっていきました。

 

まず1905年のロシア第一革命を経て、

段階的にロシアのロマノフ王朝の王権が削がれていきました

 

そして1917年のニ月革命(三月革命)を経て、

ロシア皇帝ニコライ2世が退位し、

ロマノフ王朝が倒れました

 

そこからいろいろあって、

最終的に1917年の十月革命(十一月革命)によって、

レーニン率いる社会主義政党 ボリシェヴィキが勝利

 

ロシアは正式に社会主義国家となりました。

 

超おおまかにロシア革命による変化を列挙すると、

こんな感じになります。

 

ここから先はもっと詳しく解説していきます。

 

STEP2 ロシア革命の背景

ロシア革命の背景は2つあります。

ロシア革命の背景

工業労働者と産業資本家(経営者)の対立

戦争の長期化による主戦派と反戦派の対立

 

それぞれ詳しく説明していきます。

 

工業労働者と産業資本家(経営者)の対立

18世紀のイギリスから始まった産業革命以降、

ヨーロッパ各国に工場が建てられ、

近代的な機械が導入され、

多くの工業労働者が工場で働くようになりました。

 

その過程で発生したのが「労働問題」です

労働問題をめぐって、

工業労働者と産業資本家(雇い主・経営者)は激しく対立してきました。

 

労働者の言い分はこうです。

「給料が安すぎる。給料を上げろ。」

「長時間労働がキツすぎる。ブラック企業反対!」

 

それに対して経営者(産業資本家)の言い分はこうです

「給料を上げすぎると赤字になってしまう!無理だ!」

「貴様らの給料を増やせば、私(経営者)の取り分が減るではないか!」

「他の企業との価格競争に勝つためには、人件費を削らなきゃだめなんだ!」

「貴様が辞めても代わりはいくらでもいる。」

 

など様々な言い訳をして、

労働者たちの願いを極力無視してきました。

 

こうした背景の中で、

「経営者のやり方に不満があるのなら、暴力でぶっ潰せばいいじゃないか」

「経営者を倒したあと、労働者だけで皆が平等な国を作ればいいじゃないか」

と言ったのがドイツの経済学者マルクスでした

 

マルクスは19世紀半ばに『資本論』を発表し、

「産業資本家を倒すための暴力革命が必要だ」

「産業資本家を倒すために、労働者が団結する必要がある」

と述べました。

 

そしてマルクスの影響を受けて、

各国で「マルクス主義」と呼ばれる

社会主義思想が盛り上がっていくことになりました。

 

ロシアでもこの思想を持つ者が現れ、

その代表格がレーニンだったのでした。

 

戦争の長期化による主戦派と反戦派の対立

ロシアは20世紀に入ってから、

日露戦争(1904~05年)と第一次世界大戦(1914~18年)の

2つの戦争を経験しました。

 

これらの戦争が、

労働者と産業資本家(経営者)の対立を深めることになってしまいます。

いったいどういうつながりがあるのですか?

分かりやすく説明しますね。

 

戦争が長期化する中で、

ロシア国内で戦争賛成派と戦争反対派が生まれます。

 

「戦争によって利益を得られる人」は戦争に賛成し、

「戦争によって不利益を被る人」は戦争に猛反対しました。

 

さて、誰が賛成して誰が反対したのでしょうか??

戦争に反対しそうな人はたくさんいますね。

 

前線で戦う兵士とか…

徴兵される農民とか…

 

戦争に賛成しそうなのは、

工場の経営者とかですかね?

軍に武器を売って大儲けできそうですね

おおかた正解です!

 

賛成派と反対派を少しまとめてみましょう

 

戦争への賛成派

産業資本家

皇帝とその支持者(地主貴族)

 

理由を説明します

産業資本家は言い換えると「工場の経営者」です

金属を鋳造する工場や、

服をつくる繊維工場など様々ありますが、

戦場の兵士の使う武器や軍服などの需要が高まるので、

戦争が続けば続くほど、

工場経営者は儲かってしまうのです。

 

続いて皇帝やその支持層(地主貴族)ですが、

国の支配者として君臨するために、

皇帝は自身の権威を維持する必要があります。

 

「領土を広げた」

「国を豊かにした」

「戦争に勝った」

など国民からの支持を得るための要素が必要になってきます。

 

ロシアが経験した日露戦争第一次世界大戦はどちらも、

戦争の引き金を引いたのは敵国です。

 

ですからロシア皇帝には

「必ず勝って国の領土を守る」という責務がありました。

 

地主貴族は多くの土地を持っていたので、

敵国に土地を奪われると、

自分の財産に傷がつきます。

これは避けたいので地主貴族たちは戦争に賛成しました。

 

 

戦争への反対派

農民

兵士

工業労働者

 

理由を説明します

 

まず農民は戦争を嫌がります。

戦場の兵士に食料を届けるために、

農作物を徴収されてしまうし、

若い労働力を兵隊にとられてしまうからです。

 

兵士も前線に立たされて、

マシンガンと砲弾の雨の中で戦うのが何年も続くと、

さすがにノイローゼになってしまいます。

国を守るためなら仕方がありませんが、

戦争の長期化にはさすがに反対です。

 

労働者はというと…

労働者はハッピーじゃないんですか?

 

自分が働く工場の利益が増えれば、

給料が上がりそうです!

そんな簡単にはいきません(笑)

 

まず軍への出荷が増えるため、

仕事が忙しくなります。

 

仕事が忙しくなるからといって、

給料が上がるわけではありません。

 

労働者の給料を決めるのは雇い主です。

雇い主(産業資本家)は給料を出し渋ります。

労働者にいっぱい給料をやると、

自分の取り分が減っちゃいますからね。

 

じゃあ…

仕事が増えて給料は増えない

 

ブラック企業ぶりに拍車がかかるというわけですか…

残念ながら現実はそうなります。

 

 

こうして労働者たちは、

経営者への不満を募らせていったのです

 

このようにして、

戦争によって利益を得る産業資本家

戦争によって不利益を被る労働者の対立は急激に深まっていき、

最終的には労働者たちが蜂起し、

ロシア革命へとつながっていくわけなんです。

なるほど。

 

 

STEP3 登場勢力とそれぞれの思惑を理解しよう

主に出てくる勢力としては、

皇帝社会革命党(エスエル)ボリシェヴィキメンシェヴィキ立憲民主党(カデット)

この5つです。

 

それぞれ詳しく解説していきます。

 

皇帝

ロマノフ朝最後の皇帝ニコライ2世

皇太子時代に日本に訪問した際に、

日本人警官に切りつけられる恐怖体験をしています(大津事件

 

この経験から、

民衆の感情のエネルギーの恐ろしさを身に染みて知っており、

民衆反乱に対して過剰に反応してしまいます。

 

また、ニコライ2世は、

怪しげな仙人ラスプーチンに心酔していました

皇帝に気に入られたラスプーチンは政界で台頭し、

ラスプーチンの虚言によって帝国の政治は乱れました。

 

そういう人にハマる権力者多いですよね(笑)

ニコライ2世はなぜ、

ラスプーチンにハマったのですか?

 

ニコライ2世の息子アレクセイは

血友病(かさぶたができない病)をわずらっていました。

 

皇帝が頭をかかえて悩んでいる頃、

怪しげな大男 ラスプーチンが現れました。

ラスプーチンはアレクセイの額を触って念じました

するとアレクセイの血友病が一時的におさまったのです。

やばいですね!

それ以来、ニコライ2世はラスプーチンに心酔し

ラスプーチンの言うことなら、

なんでも聞く状態になっていたようです。

そして政治は乱れに乱れ、

多くの人々からの反感を買うことになります。

 

社会革命党(エスエル)

ロシア国内の最大多数

農民から支持を得た党です。

 

政治方針は以下のとおりです。

暴力による帝政の打倒

地主貴族から土地を奪い、

農民に均等に分け与えること

 

などです。

皇帝や地主貴族から危険視されそうですね(笑)

 

ボリシェヴィキ

レーニンを中心とする、

ロシアの過激派社会主義政党

工業労働者からの支持を得ました。

 

1903年「ロシア社会民主労働党」が分裂し、

過激派と穏健派の2党派にわかれました。

 

そのうちの過激派がボリシェヴィキです。

ロシア語で「多数派」を意味します

 

労働者たちが団結し、暴力革命によって

皇帝・皇帝の支持者である地主貴族・産業資本家(工場経営者)を倒し、

経済学者マルクスが述べた「共産主義国家」を実現させようと考えました。

 

共産主義国家ってどんな国ですか?

共産主義国家というのは簡単に言うと、

「みんなでモノをつくってみんなで分け合う社会」

っていうのが正しいですかね。

 

工場も機械も・田畑もみんな(国)の共有財産にしてしまい、

みんな同じ時間だけ働いて、

みんなで作ったものを平等に分け合う

こうすれば不平等に対する不満がなくなるでしょう?

たしかに

どこかの工場や田畑で成功したときには、

そのノウハウを共有することで、

他の工場や田畑での生産効率が上がります。

こうして社会全体が発展していくと考えたのです。

 

でも共産主義国が実現すると、

財産を持っている人は困ります。

 

たとえば産業資本家(工場経営者)は

自分の土地に自分の工場を建て、

苦労して貯めた自分のお金で機械を買ったのに、

 

共産主義者たちが

「土地も工場も機械もみんなのものにしまーす!」

なんて言い出したら、

自分の土地も工場も機械も奪われて、

みんなのものにされてしまいます。

 

地主たちも、

自身が持つ広い農地を奪われて、

みんなのものにされてしまうと、

財産を失うことになります。

 

皇帝も自分の権力や財産を奪われるのが嫌なので、

もちろんマルクス主義(共産主義)という思想を危険視しました。

 

こうした敵対勢力をすべて暴力で葬って、

工場も機械も田畑もみんな(国)の共有財産にしてしまい、

みんな同じ時間だけ働いて、

みんなでモノをつくってみんなで平等に分け合う社会

を作ろうとしたのが、ボリシェヴィキでした。

 

メンシェヴィキ

マルトフを代表とするロシアの穏健派社会主義政党

工業労働者からの支持を得ました。

 

1903年「ロシア社会民主労働党」が分裂し、

過激派と穏健派の2党派にわかれました。

 

そのうちの穏健派がメンシェヴィキです。

ロシア語で「少数」を意味します

どういった点で穏健派なんですか?

ゆるやかに改革を進めて、

労働者の住みやすい国を作ろうと考えた点ですかね。

 

彼らの言う社会主義を実現するための

具体的ステップはこんな感じです。

 

メンシェヴィキの主張

①まずは産業資本家(経営者)たちと一緒にロシアを民主化する

→つまり皇帝専制政治をおわらせるということ

産業資本家(経営者)たちと妥協し、労働者の生活環境を改善する

→労働組合を公認させる・長時間労働を禁止する・労働者の保険制度を充実させる 等

 

たしかにこっちの方が現実的ですね!

 

立憲民主党(カデット)

産業資本家や貴族などを支持層とする自由主義政党

皇帝専制政治には反対し、

立憲君主制を求めていますが、

皇帝と同じく戦争の長期化には反対しませんでした。

 

工場を経営する彼らからすると、

戦争が続くほど儲かりますからね。

 

支持層の産業資本家(工場経営者)は

莫大な財産を持っているため、

 

貴族や産業資本家から財産を奪って、

国有化しようとしている社会革命党や

ボリシェヴィキを危険視していました。

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