正統主義って何ですか?タレーランの思惑は何ですか?【ウィーン議定書 Q&A】

管理人
てっちり

元 高校世界史教師

教室での授業では、限られた人数に対してしか歴史を伝えられないことに物足りなさを覚える。
そしてもっと多くの人に歴史の面白さを伝えるために
教師を辞めてネットで世界史関連のコンテンツを配信するようになった。

てっちりをフォローする
Q&A 疑問の解決

こんな人におすすめ

ウィーン会議 ウィーン議定書

ウィーン体制について学んでいるのですが、

難しくてよくわかりません

とお悩みの方

この記事で解決される疑問

・「正統主義」ってどういう意味ですか?

・「正統主義」が各国から支持された理由は何ですか?

・フランス外相タレーランは、どうして革命をリセットしたのですか?

本題

「正統主義」ってどういう意味ですか?

正統主義とは、ナポレオン戦争後の国際秩序の基本原則のこと

ウィーン会議でフランス外相タレーランによって主張され、各国の代表がこれを受け入れました

正統主義の意味

フランス革命をリセットして、革命前の社会に戻しましょう

フランス革命前の社会の姿が、ヨーロッパのあるべき姿(正統)です

 

タレーランは革命の当事国フランスの代表として参加し、

各国代表の前で

「革命の成果をすべてリセットする」と言い出したのです。

 

「革命の成果をリセットする」

 

たとえば、どんな国でどんなことがあったのですか?

正統主義の影響 フランスを例に

ブルボン家による王政を復活させる

国王はブルボン家の生き残りルイ18世(処刑されたルイ16世の弟)とする

 

フランスが主導となって、本当に革命の成果をリセットしています(笑)

 

「正統主義」が各国から支持された理由は何ですか?

各国の権力者たちは、自分の権力を守るのに必死だったからです。

当時の時代背景を見ていきましょう。

 

フランス革命の影響で、フランスは自由で平等な国になりました。

このニュースが各地に伝わり、ヨーロッパ各国の市民の間で

「自由な社会は素晴らしい」

「平等な社会は素晴らしい」

「俺たちも革命で王を倒して、自由で平等な社会をつくろう」

 

他にも、多数派民族から支配を受けていた少数民族たちも刺激を受けました

 

たとえば

ポーランド人「ロシア人の支配から逃れて、自由になろう」

アイルランド人「イギリスの支配から逃れて、自由になろう」

ハンガリー人「オーストリアの支配から逃れて、自由になろう」

 

という形で、「自由」「平等」という言葉がトレンドになりました。

 

さて、各国の権力者たちは恐れ始めます

「革命を起こされたら、私の権力は海の藻屑となる…」

「少数民族に独立されたら、領土が減る…」

そんな権力者たちのところに、神の一声があったのです

それが「正統主義」でした。

 

「フランス革命前の社会の姿が、ヨーロッパのあるべき姿である」

「フランス革命前の社会のありかたを守ろう」

 

このように各国の権力者たちが一致団結して、

「ヨーロッパを自由で平等な社会にはしないぞ」という意思表示を

自由主義運動を繰り広げる市民たちに対して行ったのでした。

 

フランス外相タレーランは、どうして革命をリセットしたのですか?

この疑問はいちばん気になるところだと思います(笑)

自分も学び始めたときは混乱しました。

なぜフランス人みずから、あんなに苦労したフランス革命を否定したのか?(笑)

 

でもタレーランの発言の背景には、フランスへの愛があったのです。

タレーランの意図

ナポレオンが負けたせいで、フランスは敗戦国

ウィーン会議では他の国に領土や賠償金をとられるかもしれない

最悪、フランスを他国の支配下におかれるかもしれない。

フランスの生き残りのために、ここは少し芝居を打とう。

 

ここからはタレーラン劇場です。

 

タレーランの思惑

(芝居をうって、同情を買おう)

わたくしタレーランは、敗戦国フランスの代表としてではなく

フランスブルボン家の代表としてここにきました。

 

ブルボン家は奪われてばかりです…

この革命は、我々ブルボン家にとって手痛いものでした。

市民たちが勝手に暴れ出し、当主ルイ16世とその奥方の命が奪われた。

そんなかわいそうなブルボン家の代表として、私はここにきました。

 

私たちブルボン家の望みはただこれだけです!

「フランス革命前の、自由も平等もない時代に戻すこと」

「王家の権力を再び、ブルボン家の手元に戻すこと」

そのために、すべてリセットして革命前の社会に戻したいのです。

 

何度も言いますが、ブルボン家は奪われてばかりです…

 

皆さまはこの会議で話し合って、

敗戦国の我々から領土を奪おうとしているのかもしれません

 

でも、奪われてばかりのかわいそうなブルボン家から、

まだ何かを奪おうとお考えなのですか!?

あなた方は鬼ですか!?

 

それに…

ブルボン家と、会議の主催国オーストリアは血縁関係ではないですか!

(ルイ16世の妻マリ=アントワネットはオーストリアのハプスブルク家出身)

まさか…親戚から領土をとるなんてことはないですよね…?

 

タレーランはこのように

「革命の被害者であるブルボン家」

「ウィーン会議の主催国オーストリアの血縁者としてのブルボン家」

の立場を全面に利用して、同情を買うことで

フランスの領土を守ろうと考えたのです。

 

もちろん市民たちの努力を否定したタレーランは

フランス国民から石を投げられます。

でも自由と平等を捨ててでも、祖国フランスの領土は守り抜いたのです。

 

少しひねくれたかっこよさが、タレーランの魅力なのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました